「浴衣を着るには どの種類の帯を買えばいいのか」という紹介から
「具体的な帯の種類の見分け方」まで写真と図解で説明していくページです。

帯の種類と見分け方

目的別に おすすめの帯を紹介

浴衣を着たい場合

半幅帯が おすすめです。
ほとんどの方が浴衣を着る際には、半幅帯を使用します。
浴衣と帯のセットを買った場合でも、ついてくるのは半幅帯です。

おすすめというよりも、浴衣用の帯は半幅帯か兵児帯しかありません。
たまに粋に着こなされる方が別な帯でお太鼓結びなどをされていますが、例外中の例外です。

カジュアルに着物を着たい場合

半幅帯が おすすめです.
浴衣に続いて「またかよ」と思われるかもしれませんが、今、どんどん半幅帯の需要が増えています。

半幅帯は、着物において最もポピュラーなお太鼓結びは出来ないのですが、
とにかく着用が楽なので、特に初心者の方でお太鼓結びの予定がないのであれば半幅帯がおすすめです。

結び方のバリエーションも豊富です。


例えば、リボンを2つ作るダブルリボン結び。けっこう簡単。

お太鼓をしたい方は九寸名古屋帯がおすすめです。
胴部分を半分に折る仕立て方をしておくと着用が楽です。

背が高い方は、下記の記事を読んでおくと得します。

振袖を着たい場合

おすすめというよりも 今現在作られている振袖用の帯は、ほとんど袋帯です。
袋帯は、振袖では定番の帯結び「ふくら雀」などの豪華な結び方をするのに十分な長さがあります。

結婚式の場合

袋帯が定番です。
結婚式のようなドフォーマルな場所では、二重太鼓という結び方をするのがマナーとなってますが、
二重太鼓は、袋帯か丸帯か本袋帯でしか出来ません。

お葬式の場合

九寸名古屋帯が定番です。
ドフォーマルな場所ではありますが、二重太鼓の帯ではなく、
「不幸が重ならないように」という意味で一重太鼓で結ぶ九寸名古屋帯が使われる事が多いです。

私たちが仕立てているも喪服用の帯の99%は九寸名古屋帯です。

入学式、卒業式など

昔、色無地に黒い羽織と九寸名古屋帯を合わせるのが流行りましたが、
最近では、訪問着に袋帯を合わせるのが主流です。

でもこれは、「色無地+九寸名古屋帯」よりも「訪問着+袋帯」を売った方が呉服屋さんが儲かるからという理由で普及したものなので、
事情を知ってる私からすると なんか微妙だなぁと思ってしまいます。

楽に簡単に着たい。

作り帯という結び目などが最初から形作られている帯があります。
もっとも数が多いのが浴衣用のものですが、お太鼓や七五三用など色々なものがあります。


例えば このようなものがあります。

帯の種類の名前や構造、見分け方を解説

袋帯

袋帯とは

袋帯の写真
袋帯の構造
  • 表の生地と、裏の生地が分かれている
  • 二重太鼓を結べる長さである

格式 フォーマル~カジュアル

古い本には「礼装用」とされている袋帯ですが、今ではフォーマル、セミフォーマル、カジュアル、カジュアルすぎるものまで何でもあります。

でも、特に最近、多くの方が「カジュアルだったら二重太鼓で結ぶ必要性が全くないのだから袋帯じゃなくていいじゃん」と気づき始め、
カジュアルな袋帯はどんどん京袋帯にシフトしていってます。

ごんちん

カジュアルな袋帯を「結ぶの面倒くさいから」という理由で京袋帯に仕立て直す方も増えてるよ

市場にある99%の二重太鼓用の帯は袋帯です。

昔は、この形状の帯(表地と裏地が別々に織られたもの)を「縫い袋」と呼び「本袋帯」と区別していましたが、
今では、この形状の帯の方がスタンダードになってしまいシンプルに「袋帯」と呼ばれています。

京袋帯

京袋帯とは

袋帯の構造

  • 表の生地と、裏の生地が分かれている
  • 一重太鼓を結べる長さである

格式 カジュアル

フォーマルな京袋帯は今のところ見たことがありません。

構造は袋帯と全く一緒。

袋帯は二重太鼓で、京袋帯は一重太鼓用。その分、長さが短い。

小売業(呉服屋さん)の方で、八寸袋名古屋帯と同じ帯として認識されてる方が多いのですが、
仕立屋としては構造が全然違うので困りますし、構造が違うので仕立て代も違います。

ごんちん

どっちが正しいって話ではないけど、分類しておいた方がトラブルは少ないと思う

丸帯

丸帯とは

丸帯の構造

  • 上の図のように、表地と裏地が一枚の生地として織られており、半分に折って仕立てます

丸帯の仕立て前の写真画像
丸帯の仕立て前(反物状態)の写真です。

丸帯の仕立てで半分に折る位置
点線の部分を半分に折って仕立てます

格式 フォーマル~カジュアル

フォーマルが主体の印象がありますが、カジュアルな帯もあります。

舞妓さんの帯がコレ。あとは花嫁さん。

最近は上記目的以外では、ほとんど作られていません。
重いので帯芯を抜いて仕立て直す方が増えています。昔は、重ければ重いほど良い帯という価値感がありました。

本袋帯

本袋帯とは

本袋の構造

  • 表地と裏地が筒状に一つに織られている

格式 フォーマル~カジュアル

フォーマルはもちろん、昔から「洒落袋」と呼ばれているものや 最近でも帯メーカーの企画ものでカジュアル路線なものもあります。

存在意義が微妙な種類の帯

昔は、袋帯と言えば このように輪で織られるのが普通でしたが、製造効率からしても、完成後のクオリティーにしても、表地と裏地が分離したタイプの方が勝っている為、今では絶滅寸前の帯です。

九寸名古屋帯

九寸名古屋帯とは

九寸名古屋帯の写真九寸名古屋帯の構造

  • 上図のように、表地と裏地が一つに織られている
  • 仕立て前の生地幅が35cm前後
  • 裏地部分の長さが120cm前後

格式 フォーマル~カジュアルまで

フォーマルの筆頭は喪服用の帯で「不幸が重ならないように」という意味で一重太鼓である名古屋帯が一番出回ってます。

付け下げや色無地などに合わせる事も多いです。

 

一重太鼓用では一番使いやすい帯

「胴に巻く部分を半分に折って仕立ててあるから名古屋帯」という認識は間違いですが、
半分に折って仕立てる前提で作られているので、その仕立て方(名古屋仕立てという)との相性が良い。

裏地が短いのはその為であり、裏地があるのはお太鼓部分までで、胴回り部分にはないので そのぶん軽い。

八寸袋名古屋帯

八寸袋名古屋帯とは

八寸袋名古屋帯の写真八寸袋名古屋帯の構造

  • 上図のように 表地と裏地が一つに織られている
  • 仕立て前の生地幅が30cm前後
  • 裏地部分の長さが120cm前後

格式 カジュアル~フォーマル

主にカジュアルな帯が多いですが、綴れ帯(つづれおび)は留袖にも合わせられるドフォーマルな帯です。

九寸名古屋帯と間違えやすい

例えば、手先部分だけを半分に折って仕立ててあるから八寸袋名古屋帯という認識は間違いです。
業者でもしょっちゅう間違ってます。

手先だけを半分に折った仕立を松葉仕立てといいます。
しかし、松葉仕立てだからといって、八寸袋名古屋帯とは限りません。

詳しく知りたい方は、宜しければ以下のページもご覧ください。

九寸名古屋帯と八寸袋名古屋帯との違いについて
名古屋仕立て、松葉仕立、開き仕立てなど分かりにくい仕立種類について

ごんちん

間違えたからといって大惨事になるわけではないのでビビる必要はないんだけど、
呉服屋の店員さんは、仕立て代と帯芯が必要か否かも変わってくるので ちゃんと覚えてね

実は、八寸袋名古屋帯なんてフルネーム呼ばわりしているのは当社を含め、ごく一部だけ。

認識違いによる事故を防ぐため、念を入れた呼び方をしていますが、多くは「八寸帯」「袋名古屋帯」「八寸名古屋帯」「かがり帯」という呼び名が使われています。

さら

じゃあ、「八寸袋名古屋かがり帯」と呼ぶべきじゃないですか?

ごんちん

・・・・

半幅帯

半幅帯とは

半巾帯の写真

  • 帯幅が16㎝~16.5㎝(袋帯や名古屋帯の半分ぐらい)

格式 カジュアル

小紋のような普段きものや浴衣などで使われます。

構造は色々。

袋帯のような表と裏が分かれている帯、丸帯のような帯、本袋帯のように筒状の帯。どれも幅が半分だったら半幅帯。

角帯(かくおび)

角帯とは

角帯の写真

  • 帯の幅が9㎝~11㎝ほど(半幅帯よりもさらに狭い)

格式 フォーマル~カジュアル

というより、男性用の帯は この角帯か兵児帯しかありません。

男性は、浴衣も角帯。袴を着る時も角帯。
兵児帯は旅館の浴衣などで使われている以外は ほぼ見ません。

六寸帯

六寸帯とは

六寸帯の写真

  • 帯の幅が6寸(22㎝)ほど(半幅帯よりも広い)

よく小幅帯とも呼ばれています。

というよりも、小幅帯と呼ばれる事の方が多いです。
でも、困った事に普通の半幅帯を小幅帯と呼ぶ方々も大勢いる為、弊社では小幅帯という呼称は避けてます。

ごんちん

どっちが正しいとか どうでも良くて、名称がカブってるのは お仕事的にマズイんです

兵児帯(へこおび)

兵児帯とは

やわらかめの素材の生地で クシュクシュっと結ぶ帯です。
元々、男性と子供が使う帯でしたが、最近は大人の女性にも人気です。

株式会社くるりさんが「ファブリック帯」という名称で
このようなスタイルを提案されて広がったものだと私は認識してます。

従来の子供用のへこ帯

兵児帯の写真

大人用のへこ帯

大人用の兵児帯の写真
色々な素材の色々な兵児帯があります。
大人のへこ帯・結んだ写真
へこ帯を結んだ写真。

よくある間違い

ごんちん

ここでクイズです

下の写真の帯は、なんという種類の帯でしょう?

この帯は、何という種類の帯でしょう?

胴を半分に折ってあるから九寸名古屋帯

ごんちん、甘いね

 

ぶぶーーー !!

 

NOニャーモフ

 
正解は、胴回りを半分に折っただけの袋帯でした。

さら

嫌がらせじゃないですか!

ごんちん

違いますよ。ちゃんと、この記事を読んでないでしょう?

仕立てあがった時の形や帯幅は「仕立て方の種類」であって「帯の種類」ではありません。
九寸名古屋帯は、胴回りを半分に折って仕立てる事が多いというだけの事です。

  • 九寸名古屋帯を半分に折らずに開いたまま仕立てる方も多いです。(開き仕立てといいます)
  • 八寸袋名古屋帯を胴を半分に折って仕立る方もいます。
  • 凄くレアな需要で特殊な処理が必要ですが、袋帯の胴に巻く部分を半分に折って仕立てる方もおられます。

つまり、どういう仕立て方をしようと、帯幅をいくつにしようと袋帯は袋帯、九寸名古屋帯は九寸名古屋帯です。

※ 切ったり繋いだりした場合は別ですが

帯の種類(形状別)による格式分けについて

この記事では大半の種類の帯に「フォーマル~カジュアルまで」と記載されてるのを見て、「意味ないじゃん」と思われた方もおられると思います。

着物業界が衰退を始めて以後、業界も新しいマーケットを作らねばと手を替え品を替え、色々な帯が市場に送り込みました。

それにより、帯の種類にそったフォーマルだのカジュアルだのという分類は意味をなさなくなってます。二重太鼓用か一重太鼓用かという点が重要で、後は素材、色柄の雰囲気で決まります。

といいつつ、一重太鼓の帯も、二重太鼓に見える比翼仕立てにすれば二重太鼓の帯として使えますから、話がややこしい事に・・・

以上、帯の種類と用途、見分け方の解説記事でした。