これを読めば、博多織の八寸帯などを自分で仕立てられます!

八寸袋名古屋帯の仕立て方

1.仕立てる前に反物が曲がってないか確認

自分で仕立てるのは、大きく曲がってない帯だけにしておきましょう。

反物状態・八寸袋名古屋帯曲がっている反物を無理にまっすぐ縫ってしまうと、無理をかけた部分がシワになってしまいます。特に「つづれ帯」のような固く融通が利かない素材の場合は、酷い出来上がりに。

このような場合、プレス加工で反物の歪みを修正してから仕立てをする必要があるのですが、帯に使われている素材が熱や蒸気にどのように反応するか目利きが出来ない方には危険なのでおススメ出来ません。

(写真の帯は、部長が知り合いから無料でもらってきた帯です。どうせ安物だから失敗してもいいやと思ってやってみるのは有りです)

プレス加工について詳しく知りたい方は、こちら。


2.タレ先となる部分を見定める (重要!)

そもそも、下図の反物の向きが分からない方は、こちらのページへ。

八寸名古屋帯・タレ先・全体図

<方法1> 界切線、またはオランダ線から割り出す

まずは、帯から「他の柄部分にはない、そこだけに存在する線」を探してください。
線が「1本だけある帯」と「2本ある帯」と「ない帯」があり、それぞれに応じたタレ先位置の割出し方があります。

たれ先を割出す線

※ 博多織の夏帯は見つけづらいものが多いので、光にかざしながら探すと楽です。

線1本の時のタレ先位置図解

線そのものが、タレ先となる帯です。線を裏側に出すと「関東仕立て」、表側に出すと「関西仕立て」になります。
自分自身の帯なので、お好みで決めてください。

線2本で片側がタレ先の図解

線が2本あり、線と線の間隔が上記の範囲内(つまりタレの長さとして適した長さ)の場合、
裏地に近い方の線がタレ先の位置となります。

線2本の中間がタレ先になる帯の図解

線が2本あり、線と線の間隔が、タレ先に必要な長さの約2倍ある帯です。
線と線の中間がタレ先となります。折り返した時に2本の線を重ね合わせて仕立てます。
写真でいうと、これ↓
八寸帯のオランダ線

<方法2> 線がない場合は寸法で割出す

タレ位置の見極め方・界切線がない場合

帯の端から110cmと縫い代の長さを足した位置をタレ先とします。

縫い代の長さは、3~5cmぐらいで良いと思います。(何cmが正しいというものではなく、折り込んだ時に安定する長さが望ましい)
ただし、タレ先~お太鼓までの長さを理想は68cm、最低でも55cm以上は確保してください。そうしないと結んだ時に小さーいお太鼓になってしまいます。

猫野郎の注意だぜ裏地になる部分の長さと、タレ~お太鼓までの長さの両方確保できない帯の場合は、お太鼓までの長さを優先してください。

着用者の寸法に対して帯の長さが不足する場合、裏地になる部分の長さを短くする事で帯の総丈を伸ばす方法もあります。
ただし、中途半端な長さにしてしまうと、着装時に縫い目が見えてしまうので気をつけてください。


 3.裏地になる部分を タレ先で折り返す

裏地になる部分を折り返す・全体図

帯を裏向きにしてください(上図は表向きです)

帯を裏向きにする

裏向きな帯

特に博多帯は、裏表が分かりにくいものがあるので注意してください。
シャツなどで経験済とは思いますが、表裏を逆にして着てしまった時の恥ずかしさは、かなりのものです。

縫い代を折り返します

縫い代の折り返し

八寸帯・3尺の返し縫い代

縫い代が長すぎたら切断する

3~5cmぐらいの長さが一番仕立てやすいと思います。

猫野郎のウンチク縫い代部分が長すぎて切らなければならない状況は珍しくないのですが、八寸袋名古屋帯はハサミを入れちゃうと、ほつれが酷くなる帯が多いので理想を言えば切らずに仕立て上げたい。

私たち仕立て屋は、熱カッターで切断したり、色々な部分の長さを微調整して切らずに済ませたりするのですが、少し解説が難しくなってしまうので、初心者の方は素直に切っちゃってください。

裏地部分を折り返します

裏地(3尺の返し)の折り返し

八寸帯・裏地を返す

八寸帯・裏地を返す2

4.折り返した部分の両脇を縫う

帯の両脇を縫う

糸で仕付けしておく

ここで失敗しやすいのが、縫製そのものよりも生地と生地の対比です。
針先に一生懸命になって「できたー!」と思ったら、歪んで縫われていたという事にならないよう、
初心者のうちは特に まち針で止めるだけでなく、仕付け(本縫いが綺麗に出来るように、ざっと大きく縫い止めておくこと)して生地がズレないように しっかり固定しておいてください。

通称「かがり」「丸かがり」「巻きかがり」で縫う

かがり縫い軌道

写真のように螺旋の軌道で縫っていきます。

八寸帯の脇縫い・縫い目拡大写真

縫い目が分かりやすいよう目立つ色の糸で縫っていますが、実際は目立たない色で縫ってください。

5.千鳥がけをする

八寸名古屋帯の千鳥ぐけ

八寸名古屋帯の千鳥ぐけ

針の運び方は、袋帯の千鳥がけと同じです。
表側に縫い糸が見えてしまわないように縫ってください。

千鳥がけの詳しいやり方は こちら。

6.手先を縫う

松葉仕立て部分

八寸帯の仕立て方は色々ありますが、今回はスタンダードな松葉仕立てにします

松葉仕立ての手先拡大写真
↑  こんな手先のヤツ。
松葉仕立てや、八寸帯の他の仕立て方を知りたい方はこちら。

帯の表側を内側にして、20㎝ほど半分に折る

松葉仕立て・半分に折る

松葉仕立て・半分に折る2

下写真の黄色い線部分を 縫う

松葉仕立て・手先の縫製位置

松葉仕立て・手先縫製

この部分は、後で帯を表返した時に隠れますので、神経質にならず糸が緩まない程度に縫っといてください。

初心者さんや、どーしても折り込んだ所がポコポコしてしまって上手くいかない人は、下図のように角をナナメにカットすると凄くやりやすくなりますよ。(でも、根本までナナメに切らないでください)

帯端をナナメにカット

表返した時に綺麗に角などがでやすいように一工夫

折り目をつけておく

生地を折って癖をつけておきます。

表返す

縫い目より上を折り返す

上の写真にあるように、縫った所の少し上で裏返します。これによって縫い目が隠れます。

裏返し連続写真1

裏返し連続写真2

裏返し連続写真3

裏返し連続写真4

裏返し連続写真5

裏返し終了

裏返し終了。なんとなく連続写真にしてみましたが深い意味はありません。
ご自由な方法で裏返してください。

手先の脇部分を縫う

手先の脇を縫う

前の工程で紹介した かがり縫い(螺旋の軌道)で、縫ってください。

止め

終わりの部分はグルグルっと何重にも巻いて留めておきます。負荷がかかりやすいので。

 

そしてー

 

ワールドクラスの帯仕立て職人

完成!八寸袋名古屋帯!

八寸袋名古屋帯の松葉仕立てが完成!