帯芯とは
帯の中に入れる布地です。
仕立ての際に帯に縫い付けます。
こんなのです。
主な使用目的は、帯の硬さを調節することです。
帯芯には、分厚いものから薄いものまで色々なものがあり、
どの帯芯を使うかによって、仕立て上がりの帯の風合いが変わります。
帯には、帯芯を入れて仕立てる前提の帯と、入れないで仕立てる前提の帯があります。
誰が決めてるかというと帯メーカーや小売店など色々なところが色々な理由によって決めていますが、
それを気にしすぎる必要はありません。
依頼されて仕立て屋の僕達が決めてることもあるよ
例えば、綴れの帯は帯芯を入れなくてもシッカリしていて、それでなくても重いので、
昔から帯芯は入れずに仕立てられる場合がほとんどでしたが、
今では、軽くて柔らかい綴れ帯が作られていますので、着用される方の好みによっては帯芯をいれる場合も増えています。
最近は、価格競争が厳しくなって、どんどん低品質なものが増えているので、
同じような名称のものでも、中身が全然違うものもあるので注意が必要です。
帯芯の品質や産地偽造などの注意点を知りたい方はこちら。
帯芯の種類
綿芯
もっともよく使われる種類の帯芯です。
色は白。(カラー帯芯をのぞく)
価格も安くて機能的。
特に強い希望がない方は、綿芯にしておけば間違いありません。
絹芯
絹の帯芯です。
織物の絹芯と不織の絹芯(織物ではない)は、
同じ絹芯という呼び名でも全く別物なので注意が必要です。
織物の絹芯
メリット
- しなやか
- 軽い
デメリット
- しなやかすぎてシャキっとしないので帯芯を入れる意味が薄い。(変化に乏しい)
- 高い
よく聞かれるので、私の周囲の着物愛好家、悉皆屋さん、呉服屋さんなど色々な職種の方に聞き込み調査をしてみましたが、
「こういう時には絹芯しかない!」という意見はありませんでした。
薄手の綿芯を入れるか、もしくは帯芯を入れないで仕立てをすることで同じような効果があるので、
私もめったにおすすめしないです。
ほんの少しだけ帯に張りをもたせたい、
絹の帯には絹の帯芯を入れたいという方が使われることがあります。
不織の絹芯
大半の帯芯は織られて作られていますが、絹の不織芯はその名のとおり織物ではありません。
使い物にならない絹成分な物体をニードルパンチ製法で生地にしたものです。
ニードルパンチ製法については、こちらの記事に詳しく書いていますので割愛します。
メリット
- 安い
- ふわりとした独特の風合い
デメリット
- 弱い・もろい
- 時間経過での劣化が激しい
はっきり言うと、激しくおすすめしません。
絹芯は高いものというイメージを利用して、差額で儲けるために作られたものだからです。
帯は引っ張ったり結んだりして使うものなので、強い負荷がかかります。
この不織の帯芯を使った多くの帯が縫製したところで破けてしまい、帯の中で帯芯がシワになったりゴロゴロしたりしています。
染め帯に使うと ふんわりした良い感じに仕上がるんだけど、
耐久性に問題があるから、やっぱり使っちゃ駄目だと思う
起毛芯
塩瀬の帯のように、帯と帯芯がすべって添わない、パカパカになる感じを防ぐ為に存在します。
激安の帯芯を除き、帯芯には大なり小なり起毛加工がされているものですが、
特に「塩瀬用」とか「起毛芯」と名付けられている帯芯は、すべらない事に特化された帯芯です。
だからといって、まったく滑らなくなるわけではありませんが。
メリット
- 摩擦力が高く、帯と帯芯の添いがよくなる。
デメリット
- 生地として厚めなので、ごつすぎて嫌という方もおられます。
やわらかいタラっとした感じで結びたい方には不向き。
この種類の帯芯は、双糸で織られたものをオススメします
双糸の帯芯は、しなやかなので ごつい感じが緩和して良い感じに仕立てあがるよ
摩擦力があって、すべりにくい帯芯の仲間
毛芯
通常の起毛芯とは摩擦力のケタが違います。
しかし、凄く分厚いので使いどころを見極めなければいけません。
帯の事をよく知っていて、ちゃんと一人一人のお客様の好みを把握している業者のみ使用可というノリです。
弊社では、凄く知識のある極一部の悉皆屋さんにのみ売れていましたが、
廃業されてしまったので、今は在庫を置いてません。(取り寄せは可)
真綿引き帯芯
昔はよく使われていた帯芯ですが、最近は滅多に見ません。
摩擦力は毛芯に勝るとも劣らずです。
この帯芯も毛芯と同じような理由で在庫は置いてません。
また、この帯芯を扱っているメーカーがまとまった数でないと卸してくれないので、実質的に取り寄せ不可です。
カラーの帯芯
色がついている帯芯です。
夏帯など帯芯が表から見えるタイプの帯に使います。
どんな色があるかは、弊社のSHOPサイトを見てください。
ゴールドとシルバーの帯芯が最近人気ですが、この2色にはすべりやすい(帯と帯芯が添いにくい)というデメリットがあるので帯を選んで使う必要があります。
夏用の帯芯
夏用の帯に合わせるために作られた帯芯です。
ドビー織と呼ばれるタイプとメッシュタイプがあります。
どちらも少しでも涼しくなるように考えて作られています。
でも、劇的に涼しくなるわけではありません。
ドビー織の夏の帯芯
絽のような感じになっています。
メッシュタイプの夏の帯芯
ドビー織の帯芯に比べて穴部分があきらかに大きい。
涼しさで言えば、どう見てもメッシュタイプの方が勝ってるわけですが、
メッシュタイプの欠点は、穴が大きい分、生地としてはヘニャヘニャで帯芯としては物足りない事です。
というわけで、僕はドビー野郎をおすすめしてる
よくある質問
- 夏帯には夏の帯芯を入れないと変ですか?
- いいえ。
実際、多くの夏帯には普通の綿芯が使われていますし、何の問題も発生しません。 - カラーの夏芯はありますか?
- いいえ。
存在しないので弊社で頑張って作っていましたが、注文が少なすぎて採算が合わないので休止中です。
こちらで販売していましたが全て品切れになっています。
袋帯用・名古屋帯用などと帯の種類が指定された帯芯について
上記のような表記は、メーカーもしくは販売店が消費者に分かりやすくする為に便宜上つけているだけの表示であって、
九寸名古屋帯用だから、九寸名古屋帯にしか使えないというものではありません。
別に、それぞれ特殊な製造工程があるわけでもありません。
しかし、特に強い希望がないならば、表記に従って使って頂ければ無難だと思います。
袋帯用と九寸名古屋帯用では、主に生地の厚みが違います。
いや、厚みだけが違うという方が正確な表現かもしれません。
僕は、ペラペラの袋帯には、九寸名古屋帯用の帯芯を使ったりするよ
帯芯を帯芯以外のもので代用出来ますか?
洋裁用の接着芯がよく使われています。
代用というよりは、接着芯を使った方が綺麗に仕上がる場合もあります。
欠点は、使っているうちに少しずつ剥がれてくる事です。
帯の中に帯芯の替わりに帯を入れてる人もいますが・・・
凄く難しい技なのでオススメはしないです。
仕立てもめちゃくちゃやりにくいので、お許し願いたいところです・・・
価格を理由に代用品を探すのであれば、安物の帯芯の方が安い。
弊社では中国製の帯芯を690円で売っています。
品質的には ろくなものではないのですが、ヘンテコなものを帯芯替わりにするよりはマシかと思います。
帯芯の種類や役割のまとめ
細かく説明すると小難しく聞こえたかもしれませんが、特別な希望がない限りは綿芯を使っておけばOKです。
最近は、コストカットの為に細かな注文には対応できない商売の形も増えてきておりますが、
「硬めの仕上がりが好きです」などと希望を伝えれば対応はしてくれるお店は多いと思います。
私個人としては、帯芯の種類よりも価格と品質の関係や産地の偽造についての知識を知ってほしいなと思います。
この記事中にも何回もリンクを貼っていて少々しつこいですが。
この記事は以上ッス
はじめましてです。裏地の無い帯 からこちらにたどり着きました。母が柄が気に入って買った帯の裏地が無くヘニョヘニョで結べず、無駄金やった、こんな帯要らんゴミやわと大層お怒りで…。(捨てないですけど、使えないです)
普通の袷用の名古屋帯として、芯を付けない帯が新品で売られるなんて思ってなかったです。
買うときに芯がない帯とは説明を受けておらず、何とか固くする手は無いものかと相談したのですが無理と。
着付け教室も着物販売も取引してる悉皆屋もあるのに無理なの?打つ手なしなの?
長い着物の歴史の中で手がない訳は無いだろうと思い、ちょっと検索。すぐに出てきたこちらのサイトを見たら、芯と裏地を買えば何とかなるのではと思いました。
どうせゴミなら試してもいいかもと思案中です。
1年前の記事にコメントするのはどうかなとは思ったのですが、すごく役立ちましたので感謝を伝えたくて書き込みます。
高い勉強代になってしまいましたが、芯って大事。
染めの着物を帯に仕立てたときも、柔らか過ぎて嫌だったので(安いヤツでは?と疑っています)
今後、仕立てる時は芯を確認しようと心に刻みました。
後、猫が多用されており大変好感度がよいです!(ФωФ)にゃ~
お役に立てて嬉しいです。
仰る通りで、帯芯は帯の本体ともいえる大事な要素です。
柔らかいから安物というわけではないですが、
安物は糸数が少ないので使ってるうちにヘナヘナになっていきますし、固い安物はバキバキして使いにくいです(=^ω^=)