母の羽織をリメイクした日記

最近着付け教室に通い始め自分でも着物を着ようという意欲がわいてきているわたし(みつやまの従業員歴10年)が母親からゆずり受けた羽織(丈が短い)を何か違う別のアイテムにリメイクしようと考え、いろいろと試行錯誤を重ね本気で全力でリメイクに取り組んだ様子をまとめてみました。

今回は羽織3着分のリメイクをしました。
母親からゆずり受けたものの、最近は長羽織という膝下まである羽織が主流らしく(20年ほど前からは長羽織が流行りらしい)、3着とも昔の短い丈の羽織だったためこのままでは使えないし・・・ってことで思い切ってリメイクすることにしました。

それぞれ何にリメイクしたらいいのかをみつやまの社内の人達に相談しながら考えました。

仕立直し・リメイクをしたいと思っているけれど、どうしたらいいかわからない、どのようなものにリメイクできるのかな?など悩まれている方の参考になれば嬉しいです。

羽織 ① えんじ色・葉柄

Before リメイク前

羽織1のリメイク前の画像(表)

羽織1のリメイク前の画像(裏)

落ち着いたエンジ色(赤紫かな?)の羽織です。
何にリメイクしようかと考えた時、まず思い浮かぶのが「名古屋帯」か「半幅帯」です。
名古屋帯や半幅帯だと汚れ等がひどくない限り羽織生地だけでリメイク可能ですが、袋帯ですと生地量が足りないため羽織だけでは作れず別に帯裏地を使用しないといけないので料金が高くなってしまうのです・・・。

弊社のベテランスタッフ(リメイクのプロ)に相談したところ、葉の柄が大きいので半幅帯にはあまり向かないから、名古屋帯がよい、落ち着いた色なので40代以上(ちなみにわたしは40代です)でも問題ないよとのことでした。
そしてわたしは身長が高め(165cm)なので一般的な前太鼓も半分に折って仕立てる名古屋仕立ではなく、前巾を自分で決められる開き仕立がよいとアドバイス頂きましたので、この羽織は開き名古屋帯にリメイクすることにしました。(羽織や着物から開き名古屋帯にする場合、裏地付き開き仕立での仕立になります。切り継ぎなどが多いため裏地無しですと切り継ぎのがたがたな部分が見えてしまいきれいな仕上がりにならないためです)

羽織や着物から名古屋帯や袋帯にリメイクする際、身頃部分は巾が狭く、解いてもスジが残ることが多いためお太鼓やタレには通常は幅がある袖部分を使用します。前太鼓には身頃の柄を出すことができます。この羽織はそれほど汚れもないので袖の柄をお太鼓とタレと前太鼓に使用することができそうです。

よく見るとところどころ小さいカビが点々とありました。写真①
色が抜けてしまっているところ(写真②)は洗い張りではどうにもならないけれども、白くなっているカビは落とせる(カビの根っこまでは落とせないけど・・)ので、それほど大きいものでもなくそんなに目立たないので色抜けはそのままにすることにして、カビで白くなっているのはそのままにするのもなんだか嫌なので、洗い張りをすることにしました。
※リメイクをする際に洗い張りも一緒にするとお得な料金でできるんです♪

写真①
羽織にカビが発生してる写真
写真②
羽織の色が抜けてる写真

リメイク開始

洗い張り

まずは洗い張りします。すべて解いて水洗いし、すべての部分を端縫いでつなげて反物状態にします。

羽織を洗い張りして解き羽縫いした状態の写真

切り継いで帯の長さの反物にする→本仕立

袖だった部分をお太鼓やたれ、前太鼓にし、それ以外の部分は身頃の部分を切ったり継いだりして名古屋帯の長さの反物にします。

反物にできたら、仕立に入ります。名古屋帯の標準寸法は弊社では帯丈約9尺8寸~1丈、帯巾約8寸2分です。

帯丈や帯巾は、お客様の身長や胴回り寸法をお知らせいただければ、寸法に合わせて長くしたり、短くしたりもできますので標準寸法でない帯丈や帯巾をご希望の場合はお気軽におっしゃってくださいね。

After リメイク完成

仕立上がり 名古屋帯裏地付き開き仕立

羽織を名古屋帯へのリメイクが完成した写真

加工内容と料金

  • 羽織→開き名古屋帯裏地付きにリメイク お仕立料金 21,300円
  • 洗い張り 4,800円
  • 帯芯 国産三河芯高級タイプ GNN-1 3,200円

高級タイプとスタンダードタイプの違いを体感してみたく、こちらの帯には高級タイプを使用してみました。

合計 29,300円
※料金はブログ掲載時のものであり変更される可能性があります。

羽織 ② 赤・絞り

Before リメイク前

羽織2のリメイク前の画像(表)

羽織2のリメイク前の画像(裏)

こちらもベテランスタッフ(リメイクのプロ)は名古屋帯がいいんじゃないかとのことでした。
けっこう明るい赤色なので、私の個人的な好みとしてはこんなに明るい赤のお太鼓を背負う自信がないので・・・半幅帯にしようかなと思いました。

白地に朱色の菱模様の羽裏も素敵なのでなにか活用できないかと考えていましたところ、ベテランスタッフが「羽裏も素敵なものが多いから、帯にしたらいいのよ」と教えてくれました。

でもこの菱模様の帯ってどんな着物に合わせたらいいのかな?とか悩んでしまい、数人に意見を聞きまわっていたところ、絞りの半巾の裏地として使って、帯を締めるときにちらっと菱模様がでるように締めたら可愛いんじゃないかとのアドバイスを頂き、表は絞りの赤、裏は菱の羽裏地でリバーシブルの半幅帯に決めました!

羽裏も素敵なものは利用できることを知り、またリメイクの幅が広がるなあと勉強になりました。

名古屋帯にしないので袖部分が必ず必要ということではないため、左袖にある柄部分を使って利休バッグも作ることにしました。帯とおそろいのバッグって、なんだかワクワクしますね♪

この羽織は汚れも特になくきれいだったので、洗い張りまではしないことにしました。

羽織地で柔らかい生地ですので、帯芯は名古屋帯によく使用する硬めの帯芯を使うことにしました。

リメイク開始

解き端縫いのし

この羽織は洗い張りは無しで、ほどいて端縫いして反物状態にします。

羽織をほどいて反物状態にした写真

切り継いで帯の長さの反物にする→本仕立

利休バッグに加工するために必要な生地を(左袖の柄部分)切り取った後、切ったり継いだりして半幅帯の反物にします。弊社での半幅帯の標準寸法は帯丈約380cm~400cm、帯巾約4寸3分です。ご指定がない場合は標準寸法でお仕立いたしますが、ご希望の長さや巾がございましたらご希望に合わせてお仕立いたします。

反物にできたら半幅帯にお仕立いたします。

バッグ加工をする前には、バッグ担当者が出来上がりのイメージ画像を作ってくれるので安心です。

After リメイク完成

仕立上がり リバーシブル半幅帯

羽織を半幅帯にリメイクした写真(完成)

仕立上がり 利休バッグ

羽織を利休バッグにリメイクした写真(完成)

加工内容と料金

  • 羽織→リバーシブル半幅帯にリメイク お仕立料金 18,500円
  • 帯芯 国産三河芯スタンダードタイプ GN-1 1,960円
  • 利休バッグ 27,800円

合計 48,260円
※料金はブログ掲載時のものであり変更される可能性があります。

羽織 ③ 黒・扇

Before リメイク前

羽織3のリメイク前の画像(表)

羽織3のリメイク前の画像(裏)

真っ黒な絵羽織です。3箇所に扇の柄がありますが、なんせ扇も真っ黒なのでなんだか喪のような・・・でも扇はおめでたい柄なので喪服ではなく、昔こどもの入学式・卒業式に参列する親はみんなこぞって黒の絵羽織を着ていったという話を聞いたことがありますので、おそらくそれだと思います。(わたしの親は着物はほとんど着ない人なので、自分でも用途がよくわかっていないようです・・・)

ただ、これをこの真っ黒のまま帯にすると、遠目から見ると(近くで見ても・・・)喪服用の帯にしか見えないし、このままではちょっとリメイクしても使い道がないなと思い、扇の柄の部分を金で囲ってもらうことにしました。そうすると喪の帯には絶対見えないですよね!扇の中の花に金以外の色(例えば赤とか)を入れたいと思ったのですが、黒に色を乗せてもそのままのきれいな色の発色にならないので上手くいかないみたいで、金か銀がいいようです。

この羽織は袖に柄がないので、後ろ身頃の2箇所をお太鼓と前太鼓にして名古屋帯にしようと思いますが、後ろ身頃は袖ほど巾がないため解いてみないとわからないけど折りスジがある可能性があるんです。(着物や羽織によって違いますが、たいてい身頃部分は8寸ないぐらいの幅なのです。)追加でスジ消しをしてきれいに消えればこのまま後ろ身頃をお太鼓に使えますが、(前太鼓にする方は折りスジがあっても、帯を締めたら見えない部分に配置しますので大丈夫)スジが消えなければ、「片側継ぎ」という方法で仕立てることも可能です。

着付け初心者、ポイント柄なので帯を締める際にうまく柄を出せるか心配だし、切らずに仕立てる作り帯にすることにしました!

リメイク開始

解き端縫いのし

こちらも特に汚れや臭いも無かったので洗い張りはせずに解いて反物状態にしました。

羽織を解いて反物状態にした写真

金加工

お太鼓と前太鼓に使う部分の扇に金加工をしました。真っ黒だった扇が生まれ変わりました!また、やはりスジが白く残っていましたのでお太鼓部分のみスジ消しもしました。スジ消しをすると、スジは気にならない程度まできれいになりました。(よくよく見ると少し白いかなという程度)

お太鼓↓

黒地の羽織に金彩加工をほどこした写真(帯にリメイク後はお太鼓になる部分)

前太鼓↓

黒地の羽織に金彩加工をほどこした写真(帯にリメイク後はお腹の柄になる部分)

切り継いで帯の長さの反物にする→本仕立

お太鼓は左後ろ身頃の扇が3面ある部分、前太鼓は右後ろ身頃の扇が2面の部分を使用し、その他はきれいな部分を繋いで帯の長さの反物にします。

反物状態にできたら、名古屋帯の本仕立てをいたします。

After リメイク完成

仕立上がり 名古屋帯裏地付き開き仕立

羽織を名古屋帯にリメイクした写真(完成)

切らずに仕立てる作り帯

羽織を一重太鼓の作り帯にリメイクした写真(完成)

加工内容と料金

  • 羽織→開き名古屋帯裏地付きにリメイク お仕立料金 21,300円
  • 金加工 8,000円
  • お太鼓部分のみスジ消し 3,000円
  • 帯芯 国産三河芯スタンダードタイプ GN-1 1,960円
  • 切らずに仕立てる作り帯 3,500円

合計 37,760円
※料金はブログ掲載時のものであり変更される可能性があります。

リメイクをした後の感想

形見の着物や羽織で、着用するには丈が短かったり、着物として着るには色や柄がなんだか若々しすぎるしちょっと・・・でも捨てることはできないしどうしようと思っている時に、帯やバッグにリメイクすることで使用できるようになるってとても素敵なことだと思いましたし、実際に生まれ変わった帯やバッグにとても感動しました。

ただ黒の羽織をリメイクした帯に関しては、どんな着物にどんなシチュエーションの時に締めたらいいのかがちょっと難しいなと思ったので、とても思い入れがありどうしても何かにリメイクしたいと思われている場合は帯にしてもよいと思いますが、そうでない場合は・・・お金がかかるわりに使い道が・・・と感じました。

リサイクルショップなどで好みの柄の着物や羽織を発見しても丈が短いことが多いのですが、とっても気に入った柄のものだったら帯にリメイクすることを考えても楽しそうだなと思っています。

新しい帯を買うことももちろんわくわくしますが、着物や羽織をリメイクして使うことも、着物ライフのはばが広がるしさらに楽しみが増えることだなと思いました!