帯の仮仕立てとは

仮仕立ての縫製位置

お客様に帯の雰囲気を分かってもらうために帯の一部分だけを縫製する仕立ての事。
帯の表の生地と裏の生地を 上の図の赤線部分(要するに両脇)を縫って合体させます。

その名のとおり「仮の仕立て」なので、このままで帯は使えません。

仮仕立ては、袋帯と京袋帯と半幅帯にのみ存在します。
九寸名古屋帯、八寸袋名古屋帯、兵児帯には存在しません。

※ 帯の種類と名称について知りたい方はこちら。

仮仕立ての縫製方法には2種類あります。

帯の仮仕立て・直線縫い
直線縫い。表から縫い目が見えません。
帯の仮仕立て・かがり縫い
かがり縫い。表からジグザグな縫い目が見えます。

直線縫いと かがり縫いのメリット、デメリットの比較。

料金

直線縫いの方が安いです。
最近は価格競争の激化で ほとんどが直線縫いになってます。

帯幅

帯幅を等間隔で縫うには かがり縫いが優れています。
やはり帯幅が揃っていると見た目が綺麗です。

耐久性

直線縫いが優れています。
かがり縫いは、縫い糸が表面に剥き出しになっているので、摩擦によって糸が切れてしまう事があります。
特に帯地が固い素材の場合は、そのデメリットが大きくなります。

リバーシブル帯の縫製

直線縫いが優れています。
直線縫いは表と裏それぞれの糸の色を変えられます。
かがり縫いは変えられないので表裏の色が極端に違う帯を仕立ててしまうと、縫製糸が異様に目立ってしまいます。

猫野郎が語る
悲しすぎる誤解

帯の仕立て屋ごんちん

かがり縫いって、縫い目が表に出ているので「手抜きの仕立て」と思われてる方が時々おられます。
でも、帯の仮仕立てにおいては逆なんです。かがり縫いの方が仕立て代が高いので、かがり縫いを用いているメーカーは品質にこだわっている所が多いんです。

かがり縫いだから高品質というわけではないんですが、最近はコストカットの為にかがり縫いすべき帯でも直線縫いにしてしまうメーカーが増えている中、
歯を食いしばってのかがり縫いなんです。

別に僕ら仕立て屋が実害を被る事はないんですけど、真面目に帯を作ってるメーカーさんが かわいそうすぎるので書いておきます。

帯の本仕立てとは

お客様が使用できるように帯を完成させる仕立ての事。
通販サイトなどで販売されている帯に「仕立て済」と書かれている帯は、本仕立てが済んでいるという意味です。
(リサイクル帯では、販売店のミスでちょくちょく未仕立て品が混ざってるようですが)

袋帯-帯芯の入れ方
帯の中に帯芯を縫い付けてー

千鳥ぐけの実演
帯の端も縫います。

※帯芯を入れない帯もあります。

仮仕立てと本仕立てを分けている意味はあるんですか?

あります。
最近、仕立て上がりで販売される帯が増えており、これはこれでお客様にとってメリット(早いし安い)はあるのですが、
何故、もともと分かれていたかというと、一人一人のお客様に合わせて帯を仕上げる為です。

例えば、やわらかめの帯が好きな方と硬めの帯が好きな方がいた場合、ご希望に合った帯芯を入れる事で帯の硬さを調節することが出来ます。
でも、元々から全部に安い帯芯を入れているお店の場合は何の意味もないかもしれません。

ごんちん

僕らは仕立て屋だから、このへんをちゃんとやりたいなと思ってネチネチとブログで啓蒙活動しとります

※逆に昔、仮仕立てしていない反物の状態での販売が流行った事もあるそうです。

【注意点】帯の仮仕立ては仮といいながら仮ではない。

普通、仮仕立てと聞いたら 仮仕立てを解いてから本仕立てをすると思うじゃないですか。
着物の場合はそうなんですけど、帯の場合は解かずにそのまま本仕立てをします。

大変まぎらわしいです。
解かずにそのまま仕立てますので、仮仕立ての良し悪しが帯の仕上がりの良し悪しに大きく関係します。

例えば、仮仕立てが良くないと、たんすにしまってる間に表地が縮んで裏地が大きく表側から見えたり、柄が歪みまくってたり、長く使ってた場合にシワになりやすくなったりします。

まとめ

色々な人から分かりにくいと言われてページを書き直したんですけど(3回目) どうですかね?