九寸名古屋帯の胴回りの幅だけを変える方法

ごんちん

これ、知らないともったいないッスよ

開き仕立てではなく、名古屋仕立ての話です。

名古屋仕立てとは

お腹の周りに巻く部分だけを半分に折って仕立てる仕立て方です。
(この記事のTOP画像が名古屋仕立て)

九寸名古屋帯の定番の仕立て方であり、多くの場合、何も言わずに仕立てを頼むと暗黙の了解で名古屋仕立てで仕立てられます。


詳しい説明はこちら。

使いやすいのがメリットですが、お太鼓の幅の半分が、胴に巻く部分の幅となってしまうので、
身長の高い人にとっては、胴に巻く部分の幅が狭すぎるというデメリットがあります。

このデメリットが嫌な方は、開き仕立てにするのがセオリーですが、
この記事では、名古屋仕立てなのに胴の幅を少し広めにする技を紹介します。

本題。名古屋仕立てで胴回りの幅だけを広くする方法。

仕立て方

九寸名古屋仕立て・帯巾を変える位置・図解

半分に折る部分と、折らない部分の境目で三角になっているところがあります。この部分(つまり表から見えない所)で、帯幅を切りかえて仕立てるだけです。

これで、「お太鼓の巾」の半分が「胴まわりの巾」になる名古屋仕立てを、
「お太鼓の巾」はそのままに「胴まわりの巾」だけ、少し広くする事が出来ます。

注文方法

「お太鼓の巾はそのままで、胴回りだけ出来るだけ広くしてください」という感じに、お太鼓の巾と、胴回りの巾を別々に指定するだけです。

どれぐらい胴まわりの巾を広くできるの?

記事の冒頭で ちょっとイキった発言をしてしまいましたが、そんなに劇的効果はありません。
(とはいえ、知っておかないともったいないというのは本音です。)

通常、我々、帯の仕立て屋は特別な注文がない場合、標準寸法のお客様であれば8寸2分(31㎝)前後の巾で仕立てます。(昔の帯は8寸ぐらいが多い)
この場合、胴回りの巾は、半分に折るので31㎝÷2=15.5㎝程となります。

それを、この仕立て方によって上手くいけば17㎝程に出来るという話です。
数字で書きますと、しょぼい感じですが、着用した場合の1㎝というのは、けっこう違うものです。

帯によって、元々の生地巾が違い、どこまで広く出来るかに差がありますので、仕立て屋にとっては「○○㎝にしてください」ではなく「出来る巾一杯で」という表現が嬉しいです。

九寸名古屋帯は、耳になる部分の少し内側を縫いますので、縫い代が余分に必要となります。

猫野郎からのお願い
呉服屋さんに罪はない

帯の仕立て屋ごんちん

この記事に書かれている仕立て方は、かなりマニアックなものです。

弊社が考えた独自の仕立て方というわけではありませんが、
ある程度の規模で組織だって始めたのは弊社が初めてかもしれません。

仕立て屋さんによっては「そんな事は出来ない」と仰るところも珍しくないので、
呉服屋さんが「出来ない」と仰ったとしても、その呉服屋さんが良くない呉服屋さんというわけではありません。

私たち帯の仕立て屋は、帯の仕立てばかりを毎日やってますが、
呉服屋さんは、帯だけでなく着物、長じゅばん、帯揚げ、帯どめ、バッグ、草履など扱う対象が多岐にわたるお仕事なので、帯の仕立ての中で特にマニアックな手法を知らないのは無理からぬ事です。

まあ、なんでこういう事を書いてるかと言いますと、この記事を読んだお客様から
「もっと早くこの仕立て方を知りたかった。悔しい。今まで仕立てた帯を全部仕立て直したい
もう二度とあの呉服屋には頼まない」

という声がけっこう寄せられておりまして、
いや、それはちょっと許してあげて欲しいと思ったからです。

仕立て屋でも、お客様からの要望を頂かない限りは、この仕立て方を提案する事は稀です。
何故なら このレベルの事まで伺ってしまうと質問事項が膨大になり、有難迷惑になってしまう事も多いからです。

まとめ

ごんちん

長々と理屈をこねちゃったけど、何も難しくはないのでお気軽にやってみてね~