帯の仕立て-手縫いかミシン仕立てか

基本的にはどんな帯でもミシンで縫えますし、手縫いでも縫えます。

変わってくるのは品質です。

どの帯もミシンの方が安く仕立てられますが、
ミシンで縫うと品質の悪化が顕著な帯と、そうでもない帯があります。
また、むしろミシンで縫った方が綺麗に仕立てあがる帯もあります。

このページでは、帯の種類ごとにミシン仕立てと手縫い仕立ての品質への影響や周辺の諸事情を書いていきたいと思います。

九寸名古屋帯

手縫い仕立ての方が綺麗に仕立てあがります。

特に塩瀬のようなフニャフニャの帯はミシン仕立てだと生地と生地の対比が悪くなるなど品質が大きく劣化します。
逆に喪服用の帯のように しっかりした生地だとミシン仕立てでも綺麗に仕立てあがります。

「出来るだけ仕立て代は安くしたいけど、仕立てが汚すぎるのは嫌だなぁ」という方は、
「ミシン仕立てでお願いします。でも、仕立てが悪くなるようでしたら手縫いでお願いします。」という感じで頼むと良いと思います。

九寸ミシン仕立ては会社によって品質が大きく変わります。

どんな仕立てでも変わるに決まってますが、九寸ミシン仕立ては「別の物体なの?」ってレベルで変わります。

まず、そもそも上手いか下手か以前に「ミシン仕立ては出来ません」という仕立て屋さんも多いです。
でもこれは、その仕立て屋さんがヘタクソとか不勉強というわけではありません。

九寸名古屋帯は構造上、ミシンで縫うのには向いていないので、少し前まではミシンで縫うという考え自体がありませんでした。
昨今の和装需要の低迷とそれによる価格競争の激化でどんどんミシンで仕立てて欲しいという要望が増えてきた感じです。

もう一つ、上手いか下手か綺麗か汚いか以前に違う形にしてしまう仕立て屋さんもあります。
反物を途中で切ったり繋いだりして作り帯のようにしてしまう仕立て方です。

これも、その仕立て屋さんに悪意があるわけではなく、
九寸名古屋帯はミシン仕立てに向いてないものと考えられていた中で、どうやったらミシンで仕立てられるか考えた結果の産物です。

でも、ちょっと前はこういう帯を沢山見たのですが、最近は減ってます。
ちゃんと手縫いと同じ形で仕立てる手法が確立されてきたのかなと思います。

ごんちん

僕たちは、九寸名古屋帯のミシン仕立てはめっちゃ得意だよ

なぜ、私たちが九寸名古屋帯のミシン仕立てが得意かというと、
ある大手企業さんから毎月数千本の依頼がくるので無理矢理に鍛えられたのです・・・

通販で安く売られている帯のほとんどはミシン仕立てです。

八寸袋名古屋帯

こちらは九寸名古屋帯と事情がかなり異なります。

八寸袋名古屋帯は生地がしっかりしている事と、九寸名古屋帯と見た目は似ていても構造がミシン向きなので、ミシン仕立てが向いています。
手縫いは手縫いの良さがありますが、単純な見た目の綺麗さで比較するとミシン仕立ての方が縫い目が揃う分、綺麗です。

弊社も特別な強いご希望がない限り、ミシン仕立てをオススメしていますが、それには、もう一つ理由があります。
八寸袋名古屋帯は、もうかなり昔からミシン仕立てが主流で、どんどん手縫いが減っていき、
手縫いを縫える職人がほぼ絶滅してしまっているのです。

ごんちん

うちにはまだ縫える人がいるけど、繁忙期には納期を長めにください・・・

袋帯や京袋帯

こちらも先述の2つの帯とは事情が異なります。
袋帯や京袋帯は「仮仕立て」と「本仕立て」に分かれますので、それぞれについて説明します。

帯の仮仕立てとは? 本仕立てとは?


仮仕立てや本仕立ての意味が知りたい方は こちら。

仮仕立て

ミシン縫いがほとんどです。
ほとんどというより全てです。

弊社はこの業種では大手ですが(世間一般では超零細企業ですが)ここ数年、袋帯や京袋帯の仮仕立てを手縫いで行った記憶はありません。

九寸名古屋帯のように価格競争が厳しくなったからミシンで縫うようになったわけではなく、
日本がバブルで踊り狂ってた時代から袋帯の仮仕立てはミシンです。

ほとんどの帯の場合、ミシン仕立てでも綺麗に仕立てる方法論が確立されているので手縫いにする必要性が薄いからです。

本仕立て

今でも手縫いが良いとされていますし、私もそう思います。

多くの会社では、袋帯の本仕立てを手縫い仕立てとミシン仕立てで分けてメニューに載せたりはしていません。
仕立て上がりでネットなどで売る場合、価格競争が厳しいので その場合は安い仕立て屋さんで全部ミシンで縫われる事が多いですし、
お客様からの預かりものは ちゃんとした仕立て屋さんで手縫いされる事も多いです。

まとめ

でも、だんだんと着物を着る人口が減ってきて、良し悪しの差を分かってもらえなくなってきているのが、
私達 仕立屋にとっては辛いところです。